風俗の仕事から足を洗えるように 彼が私にお店をくれると言ってくれた時
裕福でも無い 雇われの身である彼がそんなことをする為には
横領するか 危ない橋を渡るのかもしれないと思い
私は心から感謝したし 彼の愛を感じることが出来た
けれど今思えば それは勘違いだったのかもしれない
危ないどころか 痛くも痒くも何ともなかっただろう
横領ではなく 元々店は会社のものだった
私には莫大な借金だけが残り 彼は借金するどころか
以前と何一つ変わることなく毎日会社へ行っては 毎月給料を貰っているのだから
自分の車の助手席に彼を乗せ ディーラーまで車を走らせること正味30分
いつものように私の体に触れてくることはないところをみると
彼が私の様子を窺っているのがわかる
たとえ 私が別れを切り出したとしても
もう昔のように この男は追いかけてきたりしないだろう
反対に私が求めれば 棚から牡丹餅くらいに思い 拒否せず抱くだろう
完全に受身状態のズルイ男になりさがっている
私に対して一度たりとも誠意をみせることはなく
私が怒れば口先だけで謝ったふりをみせ 面倒になれば逃げればいいと思っている
不倫をした自分自身を棚にあげ まるで私だけが悪いとでも言っているかのように
店をくれてやったのは自分で 店を潰したのはお前だとでも言いたいのだろうか
私は彼からお店を貰ったが そのお店に自分の全財産を投資してきた
この一年 確かに収入を得ることもあったが 投資額のほうが数倍大きい
身を削る思いで稼いだ金は これからの投資だった筈であって
さあ これからだという時に 突然私からお店を取り上げて
涼しい顔して横に居るこの男の顔をみていると
自分の愚かさもさることながら この平然と座っている顔には反吐が出る
このズルイ男は 私がしな垂れかかったとしたら
今後 どんな思いで私を抱くんだろう
私が彼の立場なら もう抱けないだろう
そんなことをゆらゆらと考えながら
車は目的地であるディーラーに到着したところで 彼を試してみたくなった
車から降りた私は手を差し出して 自然に彼の手をとり繋いでみた
彼の身体は 吃驚したような反応を僅かにみせたものの
即座に彼の口元から 『ホテルへ行こう』 という言葉が出てくるとは
今 私が置かれている状況を知った上で 彼は無責任にも私を抱けるんだ
それでも私は 最後の希を捨てきれないでいた
貴方は私にだけに借金を被せたりしないよね
これから私を抱いた後に 何とかしようとしてくれるんだよね
少しでも助けようとしてくれるんだよね
そんな思いも虚しく
私は彼に抱かれたのではなく 弄ばれた気分になって涙で滲んだ
明日からどうやって生きていこうか 頭を抱えている借金まみれの私に向かって
『温泉にでも行ってゆっくりしたいなあ 誕生日には旅行へ行こう』
そんなことを嬉々と語っている彼の口元を眺めながら考えていた
貴方はいつもそうだったね
ぼんやりとした未来を語るだけで
目の前の現実には見向きもしてくれないよね
自分が楽しめることには金を使えるけれど
今の私の生活を助けようとは これっぽっちも思おうとしないんだ
後から後から涙が出てきては 止まらなかった
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